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復興事業に不可欠な資金支援スキームのために
東北各地で震災復興事業が進む中、課題となっていたのが、災害復興事業という特殊な状況において建設業者にのし掛かる資金の調達だった。工事の進捗に応じて実質的な出来高払いを受けられ、資金繰りの負担を軽減するシステム、中でも効率的で使いやすい工事進捗管理システムが求められていた。現場の進捗状況を写真に取り、位置情報を記録し、それを管理者に送信するというシステムだ。これにより、同一外観の復興住宅においても、進捗状況を区別して管理可能になった。これが構築されれば実質的な出来高払いが可能になり、多くの建設事業者が救われるだろう。逆に機能的な工事進捗システムができなければ、復興事業そのものが停滞してしまうかもしれない……こうした課題に大手金融機関と、三菱総合研究所で連携しつつ、システムインテグレータとして取り組んだのがJBSであり、東島英志と山本暁を中心とするプロジェクトメンバーだった。
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最新の技術を組み合わせるという発想
現場写真にGPSで位置情報を記録し、それをインターネット回線で送るという発想はそれまでにもあった。現場での扱いやすさを考え、タブレットを使うというアイデアもあった。しかし、それだけでは使う人を納得させるシステムにはならなかった。求められたのは、現場の工事担当者たちが使いやすく、位置精度の高いデータが自動的に記録でき、リアルタイムに送れるシステムだった。東島と山本が導き出したのは、最先端の技術と言えるクラウドとタブレットを組み合わせた最新のシステム構築だった。もちろん最新技術だからというだけで採用を決めたわけではない。低コスト・短期間にシステムを開発していくには、どうしてもこの組み合わせでなければならないというのが二人の出した結論だった。ただ、懸念されたのは、クラウド+タブレットはほとんど導入事例がなく、実際の運用では多くの難題が予想されることだったが、二人はあえて挑戦することとした。
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宮城県女川町で実証されつつある性能
二人には勝算があった。マイクロソフト社のクラウドサービスである「Microsoft Azure」と業務アプリ開発ツールの「Microsoft Project Siena」を組み合わせれば、短期間かつ低コストでシステムが構築できると確信していたのだ。マイクロソフト社との長年にわたるつきあいからその機能はわかっていたし、組み合わせて性能を出していくノウハウもあった。提案を受けた三菱総合研究所にとっても初の試みだったが、短期間かつ低コストでの構築、保守運用負荷の軽減を実現していくために最適な組み合わせであることが理解され、受注に成功した。構築された工事進捗管理システムは、復興事業の進む宮城県女川町で運用が開始され、成果をあげつつある。復興が急がれ、短期間でのシステム構築が求められる中、自分たちの関わったシステムが復興事業に貢献しているという事実を強く印象づけるプロジェクトとなった。
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金融事業部 金融営業部
営業1課主任 東島 英志
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システムインテグレーション統括本部
Ambient Officeソリューション本部
コラボレーション&ソーシャルデザイン部
MS Solutionグループグループマネージャー 山本 暁